2010/03/15(月)池上永一「シャングリ・ラ」感想

アニメ「シャングリ・ラ」が面白かったので、小説を買って読んでみました。

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感想

まず文が読みづらい印象。よく言えば濃いんだけど、悪く言えばくどい。ラノベと比べてはもちろんですが、たまに読む講談社ノベルズと比べても読みにくい。でもそれはこの作者の味でもあって、森や自然に対する強い執着やこの世界観も作者独自のもの。すごく人を選ぶ作品だなあという印象です。はまれば面白いと思うでしょう。

解説でも触れられていますが、終盤「死んだはずの人間が実は生きてました」のオンパレードで、途中で呆れて、もうそういう作風なんだという感じですが、ちょっとどうよと言えばどうよですね。*1

作品としては、アニメ無限のリヴァイアスに通じるところもあって、正しいことのために犠牲が必要なことがあるという内容です。

物語の中心である巨大建造物「アトラス」は、そこに住めない人々を犠牲にし、生贄として直接的な犠牲をささげ、トリプルAである3人のためにもまた多くの人が犠牲になっています。その状況に憤慨しながらも、最終的に主人公である國子はその犠牲の上に成っている「アトラス」の主となることを選択します。もっと多くの、今現在アトラスに住んでいる人たちを救うために、アトラスの崩壊を防ぐために。

*1 : 解説の筒井康隆氏も困惑したような(あまり褒めてない)解説で、それはそれで面白い。

アニメとの比較

アニメ版は根幹は変えないものの、ずいぶんとアレンジがされていて、アニメの方がしきいが低いと思います。分かりやすいということかな。でも、アニメではうやむやにされた部分を知りたくなれば小説を読むしかないという。小説と共通の世界観と設定、人物を使って軽い感じでオリジナル展開をしたと言えそうです。エッセンスは随分と凝縮されてますけど。

どっちが好きかといわれると難しいですね。アニメの方が気軽に楽しめるしよくできてるかなあ。小説は濃厚って感じ。オリジナルのエッセンスはやっぱり小説なのでしょうか。

その他

とにかく個性的な作家だというのはよく分かります。よくも悪くも作家性が強い。もうちょっと垢抜けるとすごい作家になるんだろうなあという印象。ものすごく熱い作品なんだけど、熱すぎて行儀のよさはない(苦笑)。でもその熱さを楽しむ作家なのでしょう。

筒井康隆氏の解説によると次回作のテンペストが面白いらしい。でも高いなあ。

2009/09/11(金)小説「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」感想

西尾維新氏の戯言シリーズ1作目です。戯言シリーズという名前はよく聞くもののなんなのかよく分からず、とりあえず1作目を探し出して読んでみたのですが、メフィス賞受賞の推理小説でした。西尾氏の他作はいくつか読んでますが、推理小説がデビュー作だとは。

非常に安定しつつ西尾氏独特の文章と世界観です。使っている語彙やコンピューター関連の知識の両方をもっている当時20歳というのはちょっと驚きです。Wikipediaによると「立命館大学政策科学部中退」だそうで理系かあ。ミステリィと知らずに読んだので途中まで「この物語はなんなんだ?」と思ったのですが、殺人が起こって「ああやっとミステリィ」だったのかと。その辺からどんどん引き込まれました。

対比論

天才がたくさん出てくる小説です。森博嗣氏のデビュー作(同じくメフィスト賞)「すべてがFになる」も天才が登場する物語でしたが、この小説は「天才たち」が登場する物語です。どちらも理工学要素がたぶんに入っており、森氏デビューからだいぶ経った2000年当時でも理工学要素ミステリィが好まれるというのは面白いなあと感じます。理工系の知識がない人には、ああいうギミックは2009年現在でも楽しいのでしょうか。不思議です。

森氏は「天才」を演出するため「理知的」という部分と「とても理工的なギミック」を大変重視していますが、西尾氏の天才の演出は「知恵比べ」そして「遊び心」で演出しています。途中まで「なんでこんなんがメフィスト賞で話題になるんだ?」と思ったのですが、2重~3重に組まれたギミックが明かされつつある終盤で「なるほど」と納得します。

しかしあえて否定的な見方をすれば、理工的ミステリィは森氏がパイオニアであって2番煎じであるだけ「すべてがFになる」ほどのインパクトはありません。メイントリックはともかく、最初の密室トリック(地震とペンキ)などは読んだ瞬間に分かってしまったぐらいで稚拙な印象は拭えません。いわゆる科学的思考ができる人には、すべての材料が出れば(考えれば)理論的に分かってしまうトリックだらけであるので、そこが魅力である一方、そこが欠点でもあります。だから西尾氏は最後の材料を解決偏の寸前まで提出しないし、証言や事実の真偽製についてはあまり深く触れていません。

つまり森氏のトリックは材料は非常に明確で推理可能だけども難しいのに対し、西尾氏のトリックは材料を曖昧にすることで推理可能にさせない感じになっています。推理させない構成というのを読者に気付かせない巧みな文章力にはやはり唸ってしまいます。

西尾氏の強み

他作を読んで感じるのは西尾氏はセカイ系である(もしくは意図的にセカイ系の物語を作ることができる)ということで、そこにあるのは本作ならば「戯言」に代表される主人公の稚拙さです。実のところ、西尾氏はここがもっとも優れているところであると感じているので、本作ではさほどそこが強調されていないのが逆に面白く感じてしまいました。逆にこんな構成力があったんだと知りました。

サヴァン症候群という言葉を使うところからも、セカイ系について洞察し、思考し、心理的な面も普段からいろいろ思考しているタイプの人間なのでしょう。さわりは普通だけど、何を考えているんだろうって感じかもしれませんね。

ミステリィや西尾氏が嫌いじゃなければ、本作は読んで損はないと思います。

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2009/08/18(火)小説「アクセル・ワールド」の感想

isbn:4048675176

電撃文庫の2009年大賞受賞作ということで衝動買いしました。

ニューロンリンカーという脳直結型のインターフェイスがある近未来という設定で、仮想現実の世界にそのまま入ることもできるというちょっとSFな世界観。それでいて学園モノ。SF的にもニューロンリンカーっていう設定も微妙だし見た目コンプレックスでダメダメの主人公とか、どうすんだよとか思いながら読み進めると、バーストリンクという仮想世界で「加速」できるソフトが出てきたところで面白くなってきます。

決定的にこれが面白いと思ったのはバーストリンクでやることが格ゲーというはちゃめちゃな設定が明かされたとき。もう、バカバカしさが大好きになりました(笑)

いくつか話題になっている小説(ラノベ)も読んでますが、それらに比べて地の文章がとても安定しています。導入の辺は「ちょっと」という部分もありますが、非常に安定した描写です。ハルヒのように飛びぬけた設定(世界観)はないものの、この安定した描写がベタだけどありがちな物語展開と、バーストリンクという仮想空間で格ゲーというアホくさい設定を支えていて実に楽しいものに仕上がっています。

やっぱり文章うまい人の本の方が、読んでていいなあ。次巻も間違えなく買います。

2008/06/08(日)小説「'文学少女'と死にたがりの道化」感想

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「なにか面白い小説ないですか?」って聞いたら進められたので読んでみました。普通のラノベかなーと思っていたら、気付いたらミステリィでした。ラノベ系ミステリィって感じですかね。ですので、ちょっと気を抜いて読むと理解し損ねるかも。

太宰治大プッシュなんでよっぽど好きなのかなーと思ったのですが、このために調べて好きになったみたいです。好きだなーってのはよく伝わってきます。

面白かったです。ミステリィ調ですけど間違ってもミステリィと思って読まない方がいいです。ミステリィと思って読むとたぶんがっかりするので。そういう意味で、ミステリィと思わせない作りになっていてうまいなーと思いました。欲を言えば遠野先輩のキャラクター性がもう一押し欲しい感じしますけど、面白かったです。話の作りがうまいですね。シリーズらしいので、第2話以降はどう見せるのか気になるところですね。

2008/01/06(日)小説「ナルキッソス サイドストーリー」感想

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C73のステージナナの配布物です。かえでさんに渡されました。
そのままサイドストーリーで、姫子と優花に焦点を当てています。文はゲームの文章そのままという感じで、あまり小説向きではありませんが、ゲームの絵と音楽を想像して読むとちょうど良い感じです。

テーマ的にはゲームと一緒ですね。ナルキッソスはどちらこというと悲痛なお話でしたが、これはまだ救いがあって自分には好みでした。
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