2009/10/12(月)アニメ「イヴの時間」1~6話感想

Gayoをたまたま覗いていたら、全話無料で公開されていたので見てみました(10月末まで)。

未来、たぶん日本。

"ロボット"が実用化されて久しく、

"人間型ロボット(アンドロイド)"が実用化されて間もない時代。

ではじめるアニメーション。絵こそ2Dで書かれていますが撮影はすべて3D上にオブジェクトを配置して行われいます。新海氏がやっている方法と言えば分かりやすいかな?(あれとは少し違うんだけども)。カメラワークが非常に面白い。

見た目は人間で会話もできるのに感情を持たない「アンドロイド」が家庭に普及し、主人の命令に従って家事などを行う。そんな世界の中での「イヴの時間」という喫茶店。この喫茶店のルールはひとつ。

人間とロボットを差別しましせん。

人間もロボットも対等に扱われるこのお店の中で、誰が人間かアンドロイドかも分からない。そんな中で織りなされるアンドロイドと人間のちょっとした触れあい。

感想(ネタバレ)

感情を持ちながらそれを表現することが禁じられているアンドロイドが、イヴの時間という特殊な空間でのみ対等に接し、雑談をすることができる。人間は外の世界で無機質なアンドロイドを道具としてみているのに、一度そこに感情があると知っただけで感情移入をしてしまいます。

しかしイヴの時間という世界の外では、アンドロイドはアンドロイド(ロボット)でなければいけない。そのロボットに感情移入をしてもそれは裏切られてしまいます。生き生きとしたアンドロイドの姿を知った状態で、外の世界で描かれる無機質なアンドロイドの姿をみたときに感じる無情な感覚。

それを青春ものとして鮮やかに描き出しているので面白いです。新海氏が徹底的に無機質に描く世界系とすれば、吉浦康裕氏の本作はウェットではないもののきちんと心理的なところを捉えつつそれでいて抑えた演出をしています。それはカメラワークにも出ていて、奇をてらわないアニメ的カメラワークに3Dならではの動きを加えているのも好感が持てます。

2009/09/11(金)小説「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い」感想

西尾維新氏の戯言シリーズ1作目です。戯言シリーズという名前はよく聞くもののなんなのかよく分からず、とりあえず1作目を探し出して読んでみたのですが、メフィス賞受賞の推理小説でした。西尾氏の他作はいくつか読んでますが、推理小説がデビュー作だとは。

非常に安定しつつ西尾氏独特の文章と世界観です。使っている語彙やコンピューター関連の知識の両方をもっている当時20歳というのはちょっと驚きです。Wikipediaによると「立命館大学政策科学部中退」だそうで理系かあ。ミステリィと知らずに読んだので途中まで「この物語はなんなんだ?」と思ったのですが、殺人が起こって「ああやっとミステリィ」だったのかと。その辺からどんどん引き込まれました。

対比論

天才がたくさん出てくる小説です。森博嗣氏のデビュー作(同じくメフィスト賞)「すべてがFになる」も天才が登場する物語でしたが、この小説は「天才たち」が登場する物語です。どちらも理工学要素がたぶんに入っており、森氏デビューからだいぶ経った2000年当時でも理工学要素ミステリィが好まれるというのは面白いなあと感じます。理工系の知識がない人には、ああいうギミックは2009年現在でも楽しいのでしょうか。不思議です。

森氏は「天才」を演出するため「理知的」という部分と「とても理工的なギミック」を大変重視していますが、西尾氏の天才の演出は「知恵比べ」そして「遊び心」で演出しています。途中まで「なんでこんなんがメフィスト賞で話題になるんだ?」と思ったのですが、2重~3重に組まれたギミックが明かされつつある終盤で「なるほど」と納得します。

しかしあえて否定的な見方をすれば、理工的ミステリィは森氏がパイオニアであって2番煎じであるだけ「すべてがFになる」ほどのインパクトはありません。メイントリックはともかく、最初の密室トリック(地震とペンキ)などは読んだ瞬間に分かってしまったぐらいで稚拙な印象は拭えません。いわゆる科学的思考ができる人には、すべての材料が出れば(考えれば)理論的に分かってしまうトリックだらけであるので、そこが魅力である一方、そこが欠点でもあります。だから西尾氏は最後の材料を解決偏の寸前まで提出しないし、証言や事実の真偽製についてはあまり深く触れていません。

つまり森氏のトリックは材料は非常に明確で推理可能だけども難しいのに対し、西尾氏のトリックは材料を曖昧にすることで推理可能にさせない感じになっています。推理させない構成というのを読者に気付かせない巧みな文章力にはやはり唸ってしまいます。

西尾氏の強み

他作を読んで感じるのは西尾氏はセカイ系である(もしくは意図的にセカイ系の物語を作ることができる)ということで、そこにあるのは本作ならば「戯言」に代表される主人公の稚拙さです。実のところ、西尾氏はここがもっとも優れているところであると感じているので、本作ではさほどそこが強調されていないのが逆に面白く感じてしまいました。逆にこんな構成力があったんだと知りました。

サヴァン症候群という言葉を使うところからも、セカイ系について洞察し、思考し、心理的な面も普段からいろいろ思考しているタイプの人間なのでしょう。さわりは普通だけど、何を考えているんだろうって感じかもしれませんね。

ミステリィや西尾氏が嫌いじゃなければ、本作は読んで損はないと思います。

asin:4062754304

2009/08/18(火)小説「アクセル・ワールド」の感想

isbn:4048675176

電撃文庫の2009年大賞受賞作ということで衝動買いしました。

ニューロンリンカーという脳直結型のインターフェイスがある近未来という設定で、仮想現実の世界にそのまま入ることもできるというちょっとSFな世界観。それでいて学園モノ。SF的にもニューロンリンカーっていう設定も微妙だし見た目コンプレックスでダメダメの主人公とか、どうすんだよとか思いながら読み進めると、バーストリンクという仮想世界で「加速」できるソフトが出てきたところで面白くなってきます。

決定的にこれが面白いと思ったのはバーストリンクでやることが格ゲーというはちゃめちゃな設定が明かされたとき。もう、バカバカしさが大好きになりました(笑)

いくつか話題になっている小説(ラノベ)も読んでますが、それらに比べて地の文章がとても安定しています。導入の辺は「ちょっと」という部分もありますが、非常に安定した描写です。ハルヒのように飛びぬけた設定(世界観)はないものの、この安定した描写がベタだけどありがちな物語展開と、バーストリンクという仮想空間で格ゲーというアホくさい設定を支えていて実に楽しいものに仕上がっています。

やっぱり文章うまい人の本の方が、読んでていいなあ。次巻も間違えなく買います。

2009/07/04(土)「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」TV放映感想

昨晩、序のTV放送を見ました。すっかり日テレ独占になりつつあるような。

ほとんどTV版に忠実な作りで細かいところを端折ったって感じですけど、キャラクターの背景がアレ(映画)だけじゃ分かりにくいんじゃないかなって気もしなくもないような感じでした。あの映画が初めてって人は早い展開に付いていけないんじゃないだろうか。キャラクターもうじゃうじゃ出てくるし。そういう人は(商業的に)相手にしてないのかなあ。

  • TV版とキャラクター作画監督が違うのか、それとも敢えて変えているのかシンジの印象がより好青年に(苦笑)
  • ミサト@三石琴乃がTV版よりずいぶん大人になった印象。大人ぶってるというよりも、大人としての余裕があった。

フィルムが整然とされエンタテインメントとしての完成度は高い一方で、TV版の熱がなかったのは「やっぱりな」という感じ。監督自身も言ってる通り、あのときのアレはもう作れないのでしょうねえ。序を見た感想としては、とてもよく出来てる普通以上のアニメ。

それよりも

個人的にはエヴェよりも、その後に企画しているだろうアニメ?か何かに興味があります。

知らない人も多いのですが、今回製作されているエヴェは庵野監督が立ち上げた株式会社カラーが製作しています(GAINAXは製作に関わってません)。製作ってのはようするにお金を出して権利を持っている人たちです。アニメーションではよく「○○製作委員会」といって、お金を出した人たちがそのまま作品の権利も全部持っていくという仕組みになっています。実際に「制作」した人たちは、売れようが売れまいがこれっぽっちも儲からない(例外あり)という仕組みです。配給も「クロックワークス、カラー」となっていて独立系(Wikipediaによればインディーズ映画)です。徹底的に従来お金の吸い上げていたところを排除して作られているということがわかります。*1

こういう事情を踏まえてみると、今回の新劇場版ってのはお金稼ぎです。宮崎アニメですら「製作委員会」に持っていかれるお金が(推測通りだとすれば)制作者にきちんと入るのは良いことです。版権を完全にコントロールしてるから制作者が望まないメディアミックスは起きないでしょう。しかも今回のマーケティングは非常に功名かつ高度です。誰かブレーンが居るんだろうなあ。

こうやって考えていくと、おそらく作りたくはないだろう*2エヴァ作ってお金を稼ぐ理由というのは、何か別に作りたいものがあるので資金を集めるためと考えられるわけど。それがアニメか実写かは分かりませんが、むしろそれに期待してしまうんだよなあ。

その情報が出るのは何年後か分かりませんが(笑)

*1 : もっとも、新規に立ち上げた株式会社カラーにそれだけの資本があるのかは不思議ですが。さらにカラーへの出資者がいるのでしょうか。資本金も不明だし誰か登記簿取ってこないかな。

*2 : 過去の発言からすると作りたくはなさそうだった。

2008/06/08(日)小説「'文学少女'と死にたがりの道化」感想

asin:4757728069

「なにか面白い小説ないですか?」って聞いたら進められたので読んでみました。普通のラノベかなーと思っていたら、気付いたらミステリィでした。ラノベ系ミステリィって感じですかね。ですので、ちょっと気を抜いて読むと理解し損ねるかも。

太宰治大プッシュなんでよっぽど好きなのかなーと思ったのですが、このために調べて好きになったみたいです。好きだなーってのはよく伝わってきます。

面白かったです。ミステリィ調ですけど間違ってもミステリィと思って読まない方がいいです。ミステリィと思って読むとたぶんがっかりするので。そういう意味で、ミステリィと思わせない作りになっていてうまいなーと思いました。欲を言えば遠野先輩のキャラクター性がもう一押し欲しい感じしますけど、面白かったです。話の作りがうまいですね。シリーズらしいので、第2話以降はどう見せるのか気になるところですね。

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