2003/04/04(金)ゲーム「銀色 -silver-」感想

シナリオ関連スタッフ

スタッフ担当
片岡とも一章、五章半分、錆。ディレクター
ヤマタカユウキ二章、五章半分。新人
高嶋栄二三章
ALFRED四章
ぶぐつお手伝い(?)。演出大半=スクリプト書き

プログラム

システムは御存知の方も多いと思いますが、フリーで公開されている NScripter をほぼそのまま使ってます。実際に、最新版の NScripter をコピーして起動すると実行できます(笑)銀色のために特にカスタマイズされた様子もなく、ただのロイヤリティ契約だと思われます(この NScripter って上手いなぁ~なんていつも思うんですよね。同じことしたいなぁとか)

NScripter って、以前から知ってたりもするんですが。システム的には Leaf の 雫、痕 のシステムのバージョンダウン版といった感じです(本音)。分かってる問題としては、回想が上手くいきませんね(恐らくプログラムが銀色のスクリプトのような使われかたを想定していないと思われる)。画面の切り換えもバージョンが少ないですし……(銀色で使われてないだけ?)。ただ、下手なソフトハウスのシステムよりよっぽどマシなのが作れるのですが。

私の(プログラムの)基準って、Leaf の にのまえはじめ(一一)さんや、アリスソフトの WAO さんだからマズいのかも。Leaf の(今もまだここで働いてるかは知りませんが)中尾さん(まじかる☆アンティークなど)も書けるプログラマですね。こういうのと比較すると、まだまだ作りが甘いですね。ここら辺はプログラマでないと分からない領域ですけど(データファイルが簡易なのはわざとかなぁ……。システムの柔軟性の高さはすごいですけど)。

もっとすごいのが、銀色のシステムを管理した人。インストールできる形式を作成した人というべきでしょうか? これはすごい。本当にすごい。NScripter って画像データとかを纏めて1つのファイルにする機能かあるんですが、このとき余計なファイルを一緒に固めてる。シナリオファイルでけならずプログラムまで一緒に入ってるというのはなんともはや……(^^;;

あと、4章の声がやたら少ないなぁ~と思ったらおまけテキスト見ると(以下引用部)、

実は四章のボイスも本当は全部ありました。

…でもやはり容量の関係で入れられなかったのです。…とても残念です(泣)

となってまして。ファイルを直接見ると一部入ってますね。これを読んで「もしや」と思って WAV ファイルを開いて見ると、録音したまま何も加工してない。ADPCM で圧縮するとか、NScripter でそういうファイルが扱えないなら、ある一定レベル以下の音をカットオフするだけで圧縮率が飛躍的に向上するのですけど……。知らないとは恐ろしい……。

ゲームシステム

「映画をみるように楽しんでください」とのことですけど。小さい文字はTV出力してやるときには向きませんでした(違)。映画のように 16対9 のワイド画面で、テキストは字幕を想定してるんですよね。ムード出てたのかなぁ……。元の画像は 640*480(4:3) で描かれてるのだから、普通にそのサイズでよかった気もしますが。同じテキストで、画面表示を変えて比較してみないと分からないところではあります。

ただ横長画面のせいでキャラ絵がみんな斜めになってましたね(立ちキャラ除く)。描く人は大変だったんじゃないかなぁという気もします。あと立ちキャラ、2人立たせてもよかった気がするんですけど。NScripter はそういうこと出来ないんだっけか?画面フェードのパターンが少ないのも、ゲームとしてはもう少し凝ってほしい点ではあります。NScripter には半透明機能(αブレンド機能)もあるのですが、使い方が面倒なせいか(私はそう思う)積極的に使われてる様子はありませんでした。

何度も書いたことですが、一本道のシナリオにほとんど意味を成さない選択肢。批評サイトとかを眺めてると結構書いてありますが、やっぱりゲームじゃないです。でもシナリオを読ませるという意味ではこれでよかったのかも知れませんね。しかし、どう頑張っても声つき紙芝居……なんですよねぇ。中途半端にゲームにしてシナリオを殺す危険性は確かにないのですけど……。

ゲームによっては選択肢が厳しくて、うまく ED が見れないということがありますが、どっちがいんだろうってのは難しい問題のような気がします。シナリオ重視のゲームで、従来のイベント型ゲームのように難易度を設定すると非常にバランスが難しくなりますからね。個人的意見ですが、痕 のようなものを除くとシナリオ選択型というのはその利点を生かせないように思います。その点ゲーム性を捨てた銀色は、選択としてアリでしょう。

音楽

基本的にはよかったです。なんかワンパターンだったり、差し障りない明るい曲が最近ゲームとかで多いのですが(私の気のせい?)、まぁ聴かせる曲を聴いた気がします。でも、もっと頑張ってくれるといいなぁーというのが正直なところ。もっと聴かせる曲を作ってもいいと思いました。曲はいいのに上手く纏めちゃって感じがして、殻というか定番というかをもっとぶち壊して欲しいです。

OP曲、ED曲についてはまぁまぁ。というのは Key や Leaf には負けます。負けます、どころか大敗です。勝ち目なしです。ラストシーンはED曲と共に流れるのですが、ED曲のインパクトや曲の持つ世界観が弱いために少し勿体ない感じがします。酷評するならば形はよい音楽ですが、よくよく聴いてると味が薄い。その味すらも、どこかで聴いたことあるような曲調ばかりで、その点今一歩と言わざる得ません。

3章が一番演技まともだったなぁ~と思ったら、おまけテキストで3章ライターさんが「声優に恵まれた」って書いてました。やっぱな……という感じ。私も(おまけ参照)2章の人の声質が好きなのですけど(逆に5章の声優さんの声質は……)、いかんせん(シナリオが)演技しづらい & 下手というか。あのテキストじゃ演技する方もやる気なるなる可能性はありな気が…… >2章

全体として演技は上手くないです。正直なところ「弱小ソフトハウス(他意なし)の出すゲームの声はこんなもんか」と。どういう意味か書かなくてもわかるでしょうが、金と力の問題です。こればっかりはしょうがないでしょう。個人的には、例え下手でも新人でも演技が好きな人を選んで、ゲームを作るという情熱を理解できる人が居ればいんですけどね(逆に情熱持って作らないと無理ですが)。どっちにしろ金がないと、録音に時間かけられませんから……(以下略)

シナリオ(のメインキャラ)をそのまま録音したようですから、それでも大量の時間がかかったでしょうねぇ~。他サイト見てると「どうせ声を入れるなら全部を」って意見もありましたね。そこまですればより映画みたいになりますね。いいか悪いかは別として。3章の夕奈に声があったらいいなぁと思ったもしましたが、もしあったらそれはそれは……。

えいごモード

本当にすごいゲーム。英語モードですもの。ではこれを英語の Windows で起動して……もダメダメです。メニューとかが使えないわけではなく、英語のテキストが全角文字ですから、シナリオの文字(英語文)が表示できません(笑)

サイト感想とか見てすごく納得したのを少し引用。「なんのために英語モードをつけたのかわかりませんが、ここまでやってくれれば文句はない」私も同感。ここまで無駄なことに、ここまで労力を注ぎ込んでくれるのは本当に素晴らしい。シナリオをいつでも英語に切り換えられたらよかったんですけど、まぁそれは無理な話で(NScripter をそのまま使う限り)。

で、銀色の英訳を、これから英語で食っていこうという友人に読んでもらいました。「意味は通じるけど、文法をがちがちに勉強した人が規約どおりに訳した感じがする」そうです。つまりネイティブな英語ではないと(これは気づいてる人も多いようですけど)。比喩や慣用句なども、本来なら日本語のそれとほぼ同じ意味の英語の慣用句に置き換えるのが適切だろう、というお話でした。自分なら違う風に訳す、と英文を見ながらいってました。但し部分的に(翻訳の)上手い部分もあるそうです。

日本の受験英語の例だということですね。音声については、素人(の私)が聞いても「がんばって喋ってますねぇ」という感じですね。余談ですが、英語モードを付けた理由は「海外では日本のゲームがただのHCG集と見られてるから」だそうです。ただ全角文字の「英字」なので海外では文字化け必須のようです。また海外サイトを軽く検索したところ、時々ひどいの翻訳があってそれが悪い要素となっているみたいなことが書かれていました。

おまけシナリオ

世界観や余韻やらを完全にブチ壊すすごいおまけです。ジョジョネタ×2、ドラクエネタ、White(前作)ネタという構成です。私はドラクエネタが面白かった。ジョジョは知りません。ドラクエネタは BGM や画面まで真似るという気合の入れようで、すげーことしますねぇ~。町の風景もどこかでみたぞーという。

「おまけが面白い」というのはずっと聞いてて、確かに面白かったのですが。けども他のサイトとか見てると「面白くない」という意見もありまして、変な話ですが私も同感ってところがあります。ドラクエネタ含め、内輪すぎたというのはあると思います。ドラクエネタは面白かったと書きましたが、正確には「ぱ*ぷんて」「レベルアップを言ってみた」「PSG風BGM」以外はあんまり面白くなかった。

余韻を壊してしまうのは、確かに勿体ない気もします。もう少し穏やかでも、おまけシナリオを作れたと思うんですけど……。あと、誰にでもわかるネタね……。

シナリオの作られ方

スタッフロールでディレクターとなってるところから恐らく片岡とも氏がメインライターなんだと思いますが。とも氏が全体の構成を作って、キーとなる1章、5章は実際書いてるわけですから。とすると2章、3章というのは銀色からは少し外れた物語になってるわけですね(特に3章ですか。2章は久世家が出てますし)。

1章から4章まで「平安」「鎌倉」「大正」「現代」という流れだそうで。全体のなかで2章、3章に求められたのは何かなぁ~とか考えてみるわけです。思い当たるものって1つで『銀糸の効果』以外の何物でもないわけですね。どっちも使用例。全体を通しての「あやめ」というキーワード、(2、3章の)どちらも生きているわけではありません。

あと決まってたと思われるのは、銀糸の効力は絶対だ……ということでしょうか?1章、4章、5章では願いに大して特に対価を支払った様子はありませんが、2章、3章では大きすぎる対価(引き換え、代償)を支払っています。4章では願いがそのまま不幸なのですけどね……。「あやめ」以外の人が願うとダメだとか……

で、実際にスクリプトに起こしたのは、つまり演出をしたのはぶぐつさんがメインのようですね。片岡とも氏のやった1章5章は除いて……ですが。この二人が全部演出をやったように思われます。個人的にはぶぐつさん頑張れ……という感じだったりするのですが(次項に続く)。

ゲームの作られ方

これも推測なのですけど、片岡ともさんが全体のシナリオ構造を起こした後に、各シナオリライターがスタートして、シナリオが上がってくるにつれCGがスタート。シナリオが完全に上がった頃に録音がスタート。英訳といい、誤植の少なさといい(気付いた誤植はなし)念入りに見直しされてるようにも感じますね。

こう考えてくと、実際のスクリプト書きは大変だったのではないかと思うんですよ。作業的に一番最後になってる。で、1章とか(とも氏の書いたもの)を除くと(シナリオの文章が)演出されること(=ゲームテキストとなること)を考えられてないわけで、それであそこまで頑張ったのは大したものではないかと思えてきます。いやほんと頑張ったと思います。とくにぶぐつさん☆

片岡ともさん以外の脚本は、脚本じゃなくて小説です。テキストを半分抜き出して利用したショートショートを某所で読んだんですけど、『小説』として全く違和感ありませんでした。別に修正とかされてないんですよ。でも違和感ゼロ。ONE から抜き出したゲームテキストがあったので見てみましたが、大半が台詞で話の転がしかたとかも「あっ違うなぁ」と思いました。

演出か? シナリオか?

Key の批評とか読んでると、人によっては「演出が上手すぎるから一度捨てるべき」と言ってる人が居て、あぁなるほどなぁとか思ってました。銀色1章なんかはすごくいい話で、感動した人も結構いるようで、私も好きだったりします。言おうとしてたこと、表現しようとしてたこと……とか私も書いてみたりして。「~のこと」って繰り返しの韻を効果的に使ってますね。

抑えた演出なんて評価もあったけど、ちゃんと演出をしてました。銀色というストーリーに合った演出ですね。これはこれでらしくて良いと思います。ただ個人的にはもっと演出されている方が好きなのですけど。これは5章にも言えますね。文章もやっぱりちゃんとゲームになることをある程度考慮して書かれてましたね。1章だけは……。

ねこねこソフトとしては、どっちがいいのでしょうね?このままシナリオだけで読ませるようにしていくのか、演出も加えていくのか? 私はこのシナリオに綺麗な演出というのを好みますが、実際やってみたらどうなるかは分かりませんね。下手な演出をするとぶち壊す可能性は大ですから(^^;;どっちに進むつもりなのか。非常に興味深いところではあります。

私としては、今後演出屋さんが加わるかどうかのような気がしますけどね。そういう体勢が整うか、整わないか。というのも、現状では、音が先についててシナリオを演出段階で直せないんですよね。下手に切り取ったり台詞変えることができない状態になってますから。ぶぐつさんは大したものだと、いやほんとに。努力を買います。

1章、5章再考

「生きた証が欲しい」とかはやっぱりフリがないね。「あやめ」と命名するシーンはフリがありすぎて、バレバレ。あくまで演出的に考えると……ですけどね。でも表現しようとしてることは、すごくいいなぁ~~と思うんですよ。

「~~のこと」という同じ韻を踏んで、「闇の世界」のシーンを何度も繰り返し入れて、そういうのも考えてるなぁ~という感じです。私特に、前者は好きでしたねぇ~。「~~のこと」。5章にも出てましたけど。画面(シーン)の切り換え方も独特ですね。ちゃんと考えてるなぁ~って感じです(というより他の章は考えてない)。

5章でちょっと気になったのは、「花を見に行こうか」というのが錆の前と後でダブってるんですよね。わざとなのかは不明ですけど、ちょっと疑問でした。ついでに些細なことで、これはどの章ってわけでもないんですけど「この」と書くべきところがいくつも「あの」になってましたね。

これは脱線だけど4章のカウンセラ。居そうで怖いですねぇ~、妙にリアルだったのはもしかして経験あり、なんて思ったりしました。

全ストーリー再考

さんざ言われてることですが、4章は中身が非常に薄いですね。トゥルーエンドで、1~3章の平和な情景が浮かび上がりますが、あれはなんか根拠のないハッピーを見せただけって感じがしますね。夢……なのかな? 演出としてはアリだと思いますけど。

錆の様子を見て、銀糸は2章の神社に奉納されたのか? とか思ったのですけどねぇ。それ以前に1章で使われてるわけで。1章では荷物は運びが襲われて、そのときに落とした朱い銀糸を名なしの女(あやめ)が拾って。で2章で奉納されるときには銀糸になってるわけですけど。3章のペンダントの関連性もなんだろ? って感じですかね。4章は、3章と同じ店と考えられないこともないわけで(こじつけ)。

ちなみに、専門家(笑)に聴いたところ銀は錆びると黒っぽくなるそうです。鉄みたいに赤くはならないそうなので、銀糸が朱くなってたのは錆びたわけでなく染まってただけですね。なぜその色が落ちたのかは謎ですけど。錆びた銀は、熱すると還元できるそうです。空気中とか酸素のあるとこで熱したらダメみたいですけど、まぁ錆びてたなら戻る方法はあるかなぁ……とか。

4章と5章を通して『銀色』という物語は綺麗に閉じていて、見事いう感じですね。ここのところすっきり終わる物語をず~~~っと見てなかったもので(某鍵)、綺麗でした。

 けどすんなり終わったのて、そのまま印象にも残りにくかった感じが。Kanon とかは第3者が想像の余地(もっと言えば2次創作の余地)を残したが……という意見もあるようです。閉じない方が盛り上がる(某*ヴァしかり)。私としては綺麗に閉じてる方が好きです。ただ、余韻を残すということも少し考えたらいいかも?(余韻=謎ではない)

片岡ともさんが一番実力あるような感じ。まとめたりとか。2章のヤマタカユウキさんは、アイデアは最高。ただ技術が……。次に期待します。3章の人はいろんな意味でがんばれー、と(笑)。4章の方は……次がんばれー。今回は薄すぎ(短すぎ)。

そういや2、3章はなくても……って意見もありました。作品という流れというかとしてはあった方がいいかも知れません。いまいちまとまりのなさは否めませんが。私は続けて5つの章をやってませんから(多分私には時間的に無理)。銀色という作品を楽しむためには、一気に最後までやった方がいいでしょうね。2、3章でどぼんと落ちたムードがあると、ラストがより爽快に映るでしょうから。

テーマ性

2章は村人のために死んでいく人間の物語。3章はすれ違う姉妹の物語。それぞれ、そりなにあったと思うんですよテーマは。願いを叶えることの不幸……とかその周辺だと思いますけど。どっちもそうでしょう? 願いが叶うには代償が必要だ……って。

1章は一番強烈で「生きた証が欲しい」=「わたし光ってた」という思い問題を投げかけてます。ちゃんと生きてた……。生きてたってなんだろう、生きるってなんだろう……みたいな。この章は本当に凄かった。

その点4章は代償(という感じのものは)なし。特に感じるものもなし。5章は銀糸の悲劇ではありますけど。ネタ明かし以上に何かあったのかなぁ……という感じもしなくありません。

いい作品であることは間違えありませんが、1章がテーマとして一番良かったんじゃないかって気がします。銀色という作品自体よりも……という意味です。